よく「宗教勧誘された!」という話になるときに、勧誘された側から聞く言葉があります。
「人の弱みに付け込んで宗教勧誘なんかしやがって!」
新宗教の二世信者であった私は、この言葉を聞くと何とも言えない気持ちになります。
宗教勧誘する側の気持ちも、される側の気持ちもわかるからです。
今回は、宗教勧誘をする信者の心理について書いていきたいと思います。
半分正解で半分不正解
「宗教の信者が勧誘するときに人の弱みに付け込んでいる」という問題、元信者であるにに的には半分正しく、半分間違いです。
確かに宗教の信者が勧誘をするとき、弱っている人がターゲットになりやすいという事実はあります。
しかし、勧誘している側が「弱っているところを狙って信者を増やしてやるぜ!」という気持ちで勧誘をしている可能性は低いと、私は考えています。
両方の心理を考えると、どちらが正しくてどちらが悪いと白黒つけるのは難しいんです。
それでは、なぜ弱っている人への勧誘が行われやすいかについて、私の考える仕組みを説明します。
救いを広めたい
宗教の熱心な信者になるきっかけとして、その宗教に救われた経験というものが挙げられます。以下に具体的な救いの例を挙げてみます。
- 指導者の言葉で悩みや苦しみから解放された
- 宗教の教義にならって気の持ち方を変えたら対人関係が改善された
- 祈りを捧げたら心が洗われた
- 教義を実践して人間的に成長した
- 仕事がうまくいくようになった
- 病気が治った
- 教団の中でコミュニティに参加できて毎日が充実している
上記の出来事が本当に全て宗教のおかげであるか否かはさておき、これらのような「救われたと思える経験」がある人は「より多くの人が自分のように救われていってほしい」という考えに辿り着きます。
なので、熱心な信者は勧誘にも熱心になりやすいのだと私は考えています。
ただし、これはあくまで原点の話です。
特に新宗教の信者である場合、他の事情で勧誘をすることもあります。
教団が勧誘を推奨する理由
指導者が「勧誘をしましょう」と信者に促したり、勧誘がノルマになっていたり、勧誘に成功した数がランクアップの条件になっている宗教があります。
私が在籍していた宗教もそのひとつです。
無信仰の人からは「ただの金儲け目的だ!」と思えてしまいそうですが、教団側が説明する理屈は恐らく以下のようなものでしょう。
この宗教では「より良い人間になって、より良く生きること」が目標です。
良い人間とは「周りに幸せを与えて社会に貢献できる人」です。
あなたはこの宗教に出会って幸せな気持ちになれましたよね?
じゃあその幸せの理由を周りにも伝え、周りの人を幸せにして社会に貢献しましょう!
あなた方に優劣をつけることはできませんが、より多くの人を幸せにした人のほうが、より社会貢献できた素晴らしい人だと思いませんか?
多くの人を導けるということは、この素晴らしい宗教をより正しく人々に伝えられているということでしょう。
祈りが深く、より真理に近づいている人に違いありません。
○○さんは×人もの人を幸せに導きました。
そんな○○さんには教団内で△△という立場になってもらい、信者の皆さんを先導してもらいましょう!
皆さんも○○さんを見習って頑張りましょうね!
これを「理にかなっている」と思うか「ただの後付けだ」と思うかは、聞く側の自由です。
しかし、熱心な信者はその宗教に救われた経験があるので、その宗教の言っていることが全て本当のことであると考えやすい心理状態でしょう。
なぜ弱っている人が対象に?
宗教の勧誘の中で弱っている人を対象にする信者の心理について、例え話で説明していきます。
もしあなたがニキビに悩まされていて、とある塗り薬でニキビが改善されたとします。
このとき、友人から「最近ニキビができて、なかなか消えなくて困ってるんだよね~。」と言われたら、あなたはどのような言葉を返しますか?

これが、宗教勧誘の心理だと私は考えています。
勧誘してくる信者さんは「この宗教を信仰すれば相手の悩みが解消されるかもしれない」と考え、あなたに宗教を勧めているのです。
その宗教の教義があなたに合うかはわかりませんが、特に新宗教の場合は「誰もがこの宗教で救われる」とうたっていることが多いので、信者さんはどんな人にもとりあえずおすすめするのです。
なので、もしあなたが宗教勧誘をされたら、まずは「ニキビ薬をおすすめするくらいの気持ちで宗教を勧めてきているかもしれないな」と考えれば、少し冷静にその後の会話を進められるかもしれません。
救う優先度の高さ
なぜ「弱っている人が対象になりやすいか」も、先ほどの例えに重ねるとわかりやすいかもしれません。
もし友人にニキビがほとんど無く、ニキビの話をしていない場合、薬を紹介しようと思いますか?

つまり、悩んでいる様子もなく幸せそうな人には、別に宗教を紹介しなくてもこのままで大丈夫そうという心理がはたらくんです。
それよりも、悩み相談をしてきたり辛そうにしている人を見ると、この人を救ってあげなきゃという気持ちにさせられます。
よって、弱っている人のほうが宗教勧誘をされる可能性が高くなり、された側は「弱みに付け込んで信者を増やそうとしている」と感じてしまう状況が出来上がるのです。
悪気はないんです
まとめ
- 弱っている人が勧誘の対象になることが多いのは事実だが、信者には悪気が無い可能性が高いので、争っても何も変わらない
- 宗教勧誘をされた方の腹が立ったり悲しくなる気持ちはわかるが、相手は恐らく善意で勧誘をしているので、暴言を投げかけたりせず「興味がない」とはっきり断るだけにしておいてほしい
- 信者さんの信じる教義やノルマ、心理はわかるが、無信仰の方に配慮して勧誘をしてほしい。特に、勧誘活動をやりたくないと言っている身内に勧誘活動を強制させることは、絶対にやめてほしい
私自身は宗教を信じられずに退会しましたが、私の理想は「宗教を信じたい人は、犯罪や人権侵害などの大きなトラブルが無い限り、自由に宗教を信じられる世界」です。
この記事によって、信じる側と信じない側の相互理解が深まることを願っています。